イモネヤガラ(芋根矢柄)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)イモネヤガラ

・分布 :九州南部、琉球、熱帯アジア、オーストラリア北東部
・生育地:亜熱帯から熱帯の常緑広葉樹林の林床。
・花期 :6~7月
・草丈(花茎):30~60cm 

・名前の由来:根茎が塊状または球状で芋(イモ)に似ていることから、矢柄(ヤガラ)は太く真っすぐな花茎を弓矢の軸に見立てたもので、イモネヤガラ(芋根矢柄)となった。

・特徴 :菌従属栄養植物。地下に横になったイモ状の長さ5~10cmの塊茎がある。花茎は淡紫褐色で直立し、無毛、少数の鱗片葉が接着してつく。鱗片葉は長楕円形で、鈍頭。 花茎の上部に10~30花をまばらに総状につける。苞は広線形、長さ1.5~2.5cm、鋭尖頭。花は紫褐色、萼片は倒卵状楕円形、長さ2cm、幅8㎜、急鋭尖頭。 側花弁は倒卵形、萼片より短く鈍頭。唇弁はやや直立し、萼片より短く、倒卵形で3裂し側裂片は円く、中裂片は反巻し卵円形、内面の脈上に乳頭状突起があり、また、中央部に2本の低い隆起線がある。 唇弁の距は目立たず長さ幅とも約4㎜、鈍頭。蕊柱は半円柱状、長さ約6㎜。

 全体像   (2013/7/13 宮崎県 門川町) 

草丈(花茎)約50cmの比較的大きな個体。花茎は淡紫褐色で直立し無毛である。花を含めて全体が紫褐色で統一され、渋い感じがする。

花茎の上部    (2013/7/13 宮崎県 門川町) 

前画像の花茎の上部の近接画像。総状花序に約20個の紫褐色の花をつけている。個々の花の向きは規則性がなく、バラバラであるが、このほうが訪花昆虫にアピールするのであろうか。

生育環境    (2013/7/13 宮崎県 門川町) 

四万十層群とよばれる砂岩、泥岩やチャートなどから構成される付加体でできた半島の海抜約130mほどの海に面した常緑樹林の林床に生育している。 イモネヤガラの共生する菌根菌は担子菌類ヒトヨタケ科イタチタケの仲間であることが知られており、この菌は広葉樹の木材腐朽菌であるため 枯れて地面に横たわった倒木や地中に残された枯死した根などが不可欠のようである。

花茎の上部    

前画像の花茎の上部の近接画像。紫褐色の花が2個、正面を向いて咲いており、側萼片が翼を広げたようで迫力がある。

2個の個体     

落葉に埋もれた緩斜面に2個のやや小さい個体が生育している。手前の葉はツワブキである。


小さな開花個体     

前画像の左側の個体。草丈(花茎)は約30cmで、赤褐色の花を8個つけている。


赤褐色の花      

前画像の花茎の上部の画像。2個の赤褐色の花が正面を向いて咲いており、側萼片が翼を広げたようで迫力があるが、紫褐色の花より明るく感じる。

 鱗片葉    

2個の小さな開花した個体。花茎の下部に長楕円形の鱗片葉が圧着している。

 花        

花は紫褐色、萼片は倒卵状楕円形、長さ2cm、幅8㎜、急鋭尖頭。側花弁は倒卵形、萼片より短く鈍頭。 唇弁はやや直立し、萼片より短く、倒卵形で3裂し側裂片は円く、中裂片は反巻し卵円形、内面の脈上に乳頭状突起があり、また、中央部に2本の低い隆起線がある。

名称      

唇弁の距は目立たず長さ幅とも約4㎜、鈍頭。蕊柱は半円柱状、長さ約6㎜。苞は広線形、長さ1.5~2.5cm、鋭尖頭。

白い粉      

小さな個体で元気に花を咲かせているが、花茎に白い粉体が見える。これは風通しが悪く、温度湿度の条件(昼間:高温度23~27℃、低湿度40~70%)、 (夜間:低温度15~16℃、高湿度99%)で発生しやすいうどんこ病にかかっているようである。この程度では結実には大丈夫そうである。

3個の開花した個体(正面)      

ツワブキの集団の中に3個のイモネヤガラが生育している。生育地のやや暗い林床のイメージとは異なり、半日蔭の明るい場所である。

3個の開花した個体(縦列)        (2013/7/13 宮崎県 門川町)    

前画像を横方向から見た画像。少し斜面で落ち葉が厚い。
雑感:ラン科植物の蒴果の種子は埃種子とよばれるほど細かいため、発芽時に菌根菌と共生し菌根菌からの栄養がなければ発芽できない。 発芽後は葉を展開して光合成を行い菌根菌との依存度を減らす種が多いが、イモネヤガラは光合成する葉をもたない完全な菌従属栄養植物である。木材腐朽菌のヒトヨタケ科イタチタケの仲間の菌根菌が共生相手のようであるが、草体は傘を開いたイタチタケよりもはるかにイモネヤガラのほうが大きく、微妙な共生関係がおもしろい。